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東日本大震災被害からの復興に関する提言(要旨)
2011 年 4 月 8 日 株式会社三菱総合研究所 ■ 提言の趣旨 ・ 東日本大震災被害からの復興は、単なる現状復旧にとどまらず、環境や高齢 化という地球規模の課題を解決する先進地域の形成を目指して、①地域主体 で、②十分な合意形成を図りつつ、③果断に実行することが極めて重要。 ・ また復興のプロセスを世界に発信し、わが国の信頼感向上に繋げるべき。 ■ 緊急提言1:被災地を支えるために 1.1 被害拡大の阻止 ¾ 有疾患被災者への適切な対応で人的被害の拡大防止を 1.2 被災地支援体制の充実 ¾ 被災地ニーズ、業務量の把握と公表を ■ 緊急提言2:夏の電力危機(東北・関東)を乗り切るために 2.1 電力需要のピークカットの徹底 ¾ 夏場の停電回避には、電力需要の総量規制よりピークカットを 2.2 省エネ・快適社会への転換加速 ¾ LED 照明、建築物の省エネ化など中長期的な取組みを ■ 復興の進め方 ― 望ましい国土・地域像の実現へ 3.1 地域主導かつ広域的な視点での復興計画 ¾ グローバルな流通や広域防災を考慮した復興計画を 3.2 安全で個性を活かした先進的まちづくり ¾ ハブ&スポーク型機能配置で地域の課題解決を 3.3 新産業創出と雇用創造 ¾ 農林水産業の復興に加えて環境や高齢化に対応した新産業の創出を 3.4 重要サプライチェーンの維持 ¾ 基幹的および生命に関わるサプライチェーンの把握と危機対策を 3.5 原子力事故からの教訓 ¾ 新たな視角による徹底した原因究明をCopyright 2011 Mitsubishi Research Institute, Inc. 2
【提言本編】
提言の趣旨 本年 3 月 11 日に発生した、わが国歴史上でも最大規模の地震・津波により 被災した皆様に心よりお見舞いを申し上げます。 今回の災害では地域の住民や各種施設に対する直接被害が戦後最大の規模に なるとともに、それに起因する生産活動や物流ネットワークの機能低下、津波 による多くの集落の壊滅、原子力発電所事故による放射性物質の飛散、そして 電力不足による生活利便性の低下や生産活動の停止・縮小など、国内にとどま らず地球規模にも大きな影響を及ぼしました。 わが国は、今回の災害の経験から学び、より安全で、強く、暮らしやすい国 を作っていかねばなりません。復興は原状の復旧にとどまらず、環境や高齢化 という地球規模の課題を解決する先進地域の形成を目指すことが望まれます。 また、地域の主体的な取組み、十分な合意形成、果断な実行が求められます。 三菱総合研究所では、全社(科学技術・社会科学の多くの専門家)を挙げて 対応策を検討し、提言を行ってまいります。その目的は、①大規模災害からの 復興、②国全体の安全性・災害耐久力強化、③日本の競争力再生、④国際的な 地位の低下防止、⑤新たな国のかたちの創造に貢献することにあります。 このたび第一回として、東北地方太平洋岸を中心とした被災地域における対 策のあり方、夏場に予想される電力危機への対策、そして今後の復興計画のあ り方を中心に提言いたします。Copyright 2011 Mitsubishi Research Institute, Inc. 3 1 .緊急提言 1: 被災地を支えるために 1.1 被害拡大の阻止 避難生活による健康状態の悪化、特に高齢層の方々の人的被害の拡大防止は 現時点で、最優先に取り組むべき課題であり、以下が特に重要です。 z 有疾患被災者等への適切な対応 持病等の情報が不明の被災者特定、重篤患者の他地域への早期移送等。 z 避難所等の生活環境向上 避難所運営に詳しい自治体職員、ボランティアの現地活動支援。 z 被災地を覆いつくす瓦礫の早期処理が総ての出発点 1.2 被災地支援体制の充実 被災した地域には小規模自治体が多いことを考慮し、状況の的確な把握と 官民挙げた支援策を講じることが重要です。 z 被災地ニーズ、業務量(専門分野・期間)の早期公表 国、都道府県が業務別実施時期や必要人員等を提示することが必要。 z 国による全体のロジスティクス、調整機能の構築 復興等に関する各リソースと役割分担を定め、その連携手順を明確にし て、全体のロジスティクス、調整機能を国が構築すべき。 z 「普段どおり」による被災地への支援 被災地以外の地域では、過度の自粛に走らず、日本全体の経済を停滞さ せないことが重要。 z 遠隔地等への避難者に対し「ふるさと便り」等で地元情報提供 特に分散避難した自治体ではコミュニティ維持活動の継続が重要。
Copyright 2011 Mitsubishi Research Institute, Inc. 4 2 .緊急提言 2 : 夏の電力危機(東北・関東)を乗り切るために この夏、例えば関東地方の供給能力は最大 50 百万 kW 程度であり、ピーク 時には10~15 百万 kW の需給ギャップが見込まれます。 産業経済の停滞を生じさせないため、電力の総需要抑制は極力回避し、需要 のピークカットに重点を置くべきです。行き過ぎた節電は熱中症をもたらす弊 害もあり、我慢による節電だけではなく、工夫による節電を推進することが重 要です。また恒久的省エネ対策も、生活利便性を維持しつつ並行して推進すべ きです。 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 時 電力需要(万k W) 供給力 ピークの抑制 ピークのシフト 家庭 業務 産業 産業/業務/家庭の区分はMRI推計 近年の平均的な最大電力を記録した2008 年7月の平日の電力需要カーブを模式化 出典:各種資料よりMRI 作成 2.1 電力需要のピークカットのための対策 この夏に停電を高い確率で回避するため、産業界で25%削減(日本経団連) を実施し、家庭にも一層の工夫と節電協力が求められます。 z 産業部門: 業界別に需要平準化計画策定・実施、操業日・時間帯の分 散化(例:夜間操業)、西日本の生産比重引上げ、自家発電装置の最大活 用等 z 業務: ピーク時のオフィス利用及び電力抑制、他のエネルギー積極利用
Copyright 2011 Mitsubishi Research Institute, Inc. 5 z 家庭: 家族はなるべく同じ部屋に、太陽光やガス機器など他のエネルギ ー積極利用、省エネ型家電商品への買い替え z 交通:電車内/駅設備節電、昼間時運行本数削減、自転車通勤推奨 2.2 省エネ・快適社会への転換加速 以下は、多少の時間とコストを要するものの、今年夏の節電だけでなく、 中長期的には経済効果も極めて大きいため、多くの家庭・オフィス等で早期 に着手することが期待されます。 z LED 照明及び省エネ型製品への転換促進 z 建築物の省エネ化(断熱材、二重窓化等) 3 .復興の進め方 ― 望ましい国土・地域像の実現へ 復興は、21 世紀の課題を解決し、望ましい国土・地域像を実現する契機とす べきであり、このとき①地域主体で、②十分な合意形成を図りつつ、③果断に 実行する、ことが重要です。また復興のプロセスを世界に発信し、わが国の信 頼感向上につなげることも望まれます。 実現すべき地域は、単なる原状復旧にとどまらず、ハード/ソフトの適切な組 合せによる新しい「ふるさと」とします。 3.1 地域主導かつ広域的な視点での復興計画 地域主導で実行すべき復興の中では、グローバルなネットワークや広域防 災の観点が求められます。東北では、これまで地元経済界等が協力して作り 上げてきた東北圏広域地方計画等があり、これらを活用することで、整合性 とスピードを確保すべきです。 3.2 安全で個性を活かした先進的なまちづくり 被災地域の復興には、防災性の飛躍的向上に加えて、地域の持つ諸課題を 解決する構想を提案します。
Copyright 2011 Mitsubishi Research Institute, Inc. 6 (1)防災性の向上 復興は安全な土地で行い、危険地域は、たとえば公有地として自然共生型 の観光資源等として利用すること、また行政、医療等の拠点施設は安全性の 特に高い地区に集約し、ネットワークでサービス提供するハブ&スポーク型 構造を提案します。 (2)地域問題の解決 画一的なまちづくりではなく、地域の個性を活かした先進的な取組みをす べきです。例えば歩いて暮らせるバリアフリーが徹底されたコンパクトシテ ィを形成し、地域高齢化への対応を図ることなどが重要です。 z 化石燃料への依存度が低い環境先進地域 z 無形文化財的なふるさと再生(他地域に移転しても祭りなどソフトは維 持) 3.3 新産業創出と雇用創造 (1)水産業の再生 z 漁業経営体の経営体力強化 漁協の広域連携や県漁連機能強化、水産会社、市場卸等との連携 z 各漁港の機能分担と効率的・効果的な漁業基盤整備 (2)農業の復興に企業活力等の活用 z 未分譲工業団地や大規模未利用地、仮設住宅地隣接地等の活用 z 広く東北地域の休耕農地を活用して被災者雇用推進 z 農地集約・大規模経営を前提に農業法人を核とする企業的営農を実現
Copyright 2011 Mitsubishi Research Institute, Inc. 7 (3)次世代をリードする産業の創出 地域資源の活用と環境・エネルギー問題の解決(林産資源のバイオマスエ ネルギーとしての活用等)や、高齢化等の社会の課題を先取りした次世代型 産業の創出を復興計画において位置づけることが重要です。 3.4 重要サプライチェーンの維持 グローバルな広がりを持つ基幹的サプライチェーンや、医薬品・医療材料 等の国民の生命の安全に関するサプライチェーンは、国または自治体がその 実態を把握し、危機発生時の維持方策を計画すべきです。 3.5 原子力事故からの教訓 事故を新たな視角で徹底的に調査し、そこから得られる知見や教訓を国内 外に発信し、活かすことが、世界に対する日本の責務です。 以 上 本件に関する問い合わせ先 株式会社 三菱総合研究所(http://www.mri.co.jp/) 〒100-8141 東京都千代田区永田町二丁目10番3号 広報・IR 部 広報室 電話:03-6705-6000 ファクシミリ:03-5157-2169 E-mail:[email protected]